『東京ゴッドファーザーズ』について…
注意:私が大学の頃書いたコラムです。かなり拙い文章なのでご注意を。
『東京ゴッドファーザーズ』について…
2015年、12月。クリスマスが後2日と迫ったときだっただろうか。僕はツタヤにいた。お目当てはクリスマスの時期になると定期的に観たくなるある一本の映画を借りるためだ。話が少し逸れるかもしれないが、クリスマス映画と言ったら、皆さんは何を真っ先に思い浮かべるだろう。定番と言ったら、『ホームアローン』『34丁目の奇跡』『ナイトメアビフォアクリスマス』の三本だが(あくまで個人の感想)、B級映画が好きな方は『サタンクロース』を思い浮かべるかもしれない。
僕の目当ての品は『東京ゴッドファーザーズ』というアニメ映画だった。この作品は、クリスマスの夜に捨てられた赤ん坊の母親を探すためにホームレス二人組(おっさんとおかま)と家出少女が奮闘するという、笑って泣けるロードムービー的良作映画なのだが、世間的にそこまで知られていない。そういう作品を褒めるとサブカル糞野郎とか言われるのだが、僕は何と言われようともこの作品をお勧めする。是非クリスマスに観て欲しい一本だ。
『東京ゴッドファーザーズ』はクリスマス映画としても優秀だが、この作品の監督である(世間的に言ったらOVA版ジョジョの奇妙な冒険を手掛けたことで有名な)今敏(こんさとし)監督の入門作品としても優れている。
僕は彼の監督した作品、脚本をした作品を全部観たのだが、彼の手がけたほとんどの作品ははっきり言って世間受けしないと思われる。監督としての処女作『パーフェクトブルー』では、元アイドルに迫るストーカーの狂気を描いたかと思って観ていたら、途中から主人公ミマの妄想と現実が混ざり合っていき、観ている人々はどれが事実でどれが虚構かラストに近づくにつれてだんだんとわからなくなっていく。この姿勢はほぼすべての作品で貫かれている。次作の『千年女優』では、主人公が出演した映画(虚構)と現実が、監督にとって初のテレビアニメ作品である『妄想代理人』では、妄想と現実が、脚本を手掛けた『彼女の想いで』では、主人公や宇宙船の記憶と現実が、そして、映画としては遺作である『パプリカ』では、夢(虚構)と現実が入り混じっていく。
『東京ゴッドファーザーズ』は、その姿勢を彼が崩した唯一の作品だ。だから、今敏の作品を見始めたいと思う方が居たら、声を大にして僕は「初めは『東京ゴッドファーザーズ』から見始めるのがオススメだ。」と言いたいのである。
(ちなみに、冒頭の話の続きだがみんな思うことが一緒なのか5つあるレンタルDVDがどれも借りられていて、結局その日は借りることができなかった。)